歌に限らず、著作物が我々の手元に届けられるまでには、著作権者だけではなく、いろいろな人の手助けが必要になります。
 先の例でいえば、歌を歌った歌手のCさん、CDを発売した会社Dがなければ、Aは我々の手元には届かないのです。
 しかも、CさんはAを歌うために、レッスンを受けたり、レコーディングのために何時間も拘束されたり……と、それなりの苦労をしているはずです
 Dについても同様です。レコーディングをし、編集してCDにし、広告・宣伝し……と、膨大なコストをかけてAを販売したのです。

 このような人々が不法な複製などにより、作品を世に伝えよう、という意欲をそがれてしまうことは、文化の発展に寄与することを目的とする著作権法上、無視できない損失となります。

 そこで、法はこれらの伝達にかかわる人のうち、特に保護しなければならない人として、
①:その歌声や演技などによって、著作物を実質的に世に伝え、演じる際にいろいろ創作的な行為をする実演家と、
②:その流通に深く関わり、いろいろな工夫をして世に著作物を流通させようとするレコード制作者などに限定して、著作権者が有する権利のうち、その性格に応じて彼らに認められるにふさわしい権利を著作権者と同様に与えよう……というのが、著作隣接権が彼らに認められる所以です。